〇概要
当院は手術部、救命救急センター、集中治療部、腎疾患治療部、光学医療診療部、遺伝子・細胞療法部、ハートセンターなどの中央診療部門を中心に、各診療科病棟、外来を含め病院全体を対象としています。
〇職員数
臨床工学技士:27名(九州大学病院別府病院1名含む)
1.人工心肺業務
心臓や大動脈の手術を行う場合、心臓を一時的に止める必要があり、心臓が止まっている間の全身の循環と呼吸の機能を人工心肺装置によって代行します。
手術中、臨床工学技士は患者さんの状態や手術の進行に合わせ人工心肺装置の操作を担当しています。
薬剤の投与や心臓を止める薬剤の注入、輸血、電解質補正、体温管理、血圧管理など、全身管理を行っています。
その他、出血を回収する自己血回収装置や超音波血流計などの操作も行っており、高度かつ幅広い知識が求められます。
技術取得には呼吸、循環、代謝全てを理解した上で年単位の時間がかがります。当院には体外循環に関するエキスパートである体外循環技術認定士の資格取得者が13名います。
2.手術部
手術室で使用される全身麻酔器の管理や内視鏡外科手術装置、手術支援ロボット(da Vinci)のセットアップなどを行っています。また、整形外科の手術では神経のモニタリング(SEP/MEP)を担当し、出血が予想される手術では輸血量を減らすため、出血した血液を洗浄し患者さんに戻す自己血回収装置の操作を行っています。
その他、手術室で発生する機器のトラブル時の対応などを行っています。
3.救命救急センター・集中治療部(ICU)
集中治療部では患者さんの状態により様々な生命維持管理装置が用いられます。
心臓や肺の機能を代行する補助循環装置ECMOや心臓の負荷を軽減するIABP、また近年ではカテーテルを心臓内に留置し心臓内から心臓の補助を行うIMPELLAの運用、管理を行っています。当院は7台のECMO装置を保有しています。
その他、人工呼吸器や血液透析装置を使用する際は、準備・使用中の管理を行うなど、医療機器への専門技術だけでなく、治療に関する充分な知識が必要とされます。
4.MEセンター
病院全体で使用している医療機器をMEセンターで中央管理し、医療機器の安全及び効率的な運用を行っています。
特に輸液ポンプ、シリンジポンプ、保育器、人工呼吸器、患者監視装置などの清掃・点検を行い、病棟や各部門への貸し出しを行っています。MEセンターではすべての医療機器をバーコード管理しており、定期点検やバッテリーの交換時期を逃すことなく適切なタイミングで医療機器の定期点検を行っています。また、機器1台ずつに電子タグを備え付けており、機器が院内のどこで使用されているか把握することができます。
その他、病棟や各部門にて機器トラブルの対応も行っています。
5.光学医療診療部
内視鏡室では年間15000件を超える内視鏡検査と治療を行っています。
現在透視も可能な部屋も含め8室の検査室があり、それぞれ独立した部屋となっています。すべての内視鏡検査装置がハイビジョン対応で、より鮮明な画像を得ることができます。
臨床工学技士は内視鏡(電子スコープ)の内視鏡装置への取り付けや周辺機器(電気メス、送水装置など)の始業点検、検査後の洗浄や使用状況・洗浄消毒の履歴管理システムの運用を行っています。
また、機器の日常・定期点検、トラブル対応などを行っています。
6.腎疾患治療部(KCU)
当院の腎疾患治療部では緊急透析や手術、精査目的で来られる透析患者さんに対して透析治療を行っています。
臨床工学技士は、透析で使用する機器の準備や透析液を供給する装置の精度チェック、透析で使用する水質の検査、機器のトラブル対応などを行っています。
また、透析の導入、患者さんの血圧測定、穿刺または穿刺介助から治療中の機器の操作、投薬、回収(返血、抜針、止血)までを行っています。
7.遺伝子・細胞療法部
遺伝子・細胞療法部では、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などに対する造血幹細胞移植治療や肝疾患、神経疾患、血液型不適合臓器移植などに対する血漿交換療法が行われています。
血液成分分離装置を用いて治療に必要な血液成分のみを採取し、治療を行います。
その他、白血球除去療法などの治療に関与しています。
臨床工学技士は、装置の準備(回路のセットアップ)から装置の操作、トラブル対応を行っています。
8.補助人工心臓(VAD)管理
補助人工心臓とは重症心不全により動きが悪くなった心臓の代わりに血液を左心室から大動脈に送る装置です。
装置を体内に植え込むためには手術が必要ですが、手術後は外出もでき普段通りの生活を送ることが可能となります。
退院後、患者さんは定期的に通院する必要があり、外来にて機器の破損の有無、ポンプの回転数の調整、消費電力、アラーム履歴などのチェックを行って対応しています。
臨床工学技士はVAD装着中の入院患者の日常点検、トラブル対応や消耗品等の交換、外出・外泊トレーニングへの同行、患者自宅の療養環境(寝室・電源工事)の確認、患者退院後の支援施設(病院・消防署)・社会復帰先(会社・学校)職員への取り扱い説明など、患者さんと介護者のサポートをいたします。
9.シミュレーター部門
令和4年より臨床工学部門がシミュレーター業務へ介入を始めました。まだまだ始まって日が浅い業務になります。
現在、定期的に医療系統合教育研究センターのスタッフとカンファレンスを行い、各種シミュレーターの管理・運用に携わっています。主な業務は、シミュレーター機器の点検・医学生実習の指導・先生方の補助などを行っています。
現在、九州大学医療系統合教育研究センターと管理しているシミュレーター機器は分類で9項目、物品ごとで80種類、個数で588個になります。医学科の授業の中で、OSCEという参加型臨床実技試験が医師法に明記されました。この実技試験は医師国家試験と同レベルに属し、臨床実習の前後で実習されます。国から臨床手技を経験させていくことが推奨されており、試験内容に高度な手技項目も追加されたことで、今後シミュレーターを使用する機会が増えていくと思います。これからもシミュレーターが教育や業務の一環として活用されていくことを期待しています。
九州大学医療系統合教育研究センター シミュレーター貸出機器一覧